【霊視鑑定ご相談事例】霊界三河屋業務。あの世からのご要望を承っております。「味噌餡の柏餅」
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霊界三河屋業務
うちにはよく亡くなられた方が来る。
何かしらの要望があって来るので、この事を私は「霊界三河屋業務」と呼んでいる。
ちなみにこの三河屋に来る皆様は玄関からは来ない。何故かベランダからやってくる。
うちのベランダは、霊界においての勝手口なのか。
「すみませんが」
今日も勝手口から来客だ。
今回は私の祖母が来訪
今度のお客様は、私の祖母だった。
「絹笠の味噌餡の柏餅を誰もお供えしてくれない」
祖母はいつも同じ匂い袋を持ち歩いていたので、その香りが部屋中に漂った時に、あ、祖母が来た、と理解した。
生前と同じようにお気に入りの着物を着て、背筋をしゃんと伸ばし、静かな笑顔で現れた。
(やっぱり父にそっくりだな。)
私はそう思って祖母を眺めていた。
「絹笠の味噌餡の柏餅」
それは、祖母になんどもおねだりをして買ってもらったものだ。
祖母が点てたお抹茶と、その柏餅を食べるのが私の子どもの頃の至福の時間だった。
しかし、そもそも味噌餡の柏餅はコチラでは売っていない。
私も久しぶりに食べたいなと思ったのもあり、地元に住む親戚に「どこかに今の時期、味噌餡の柏餅が手に入る所はないか」と聞いて回ったものの、誰もが「今の時期には見ないね」という回答だった。
この頃はまだ、今のようにあらゆる情報がネットで調べられる時代の少し前だったので、これ以上調べるのは不可能だった。うーん、他のモノで交渉してみるか。
しかし、最近墓参りにも行っていないので「来い」と言われている気もしたので、まずはトンボ帰りになるが仕方ない、と本州の半分ぐらいの距離を車で向かってみる事にした。
道中は「絹笠の味噌餡の柏餅」を希望する祖母と、「妥協案を出して欲しい」私との交渉だった。
なかなか折れない祖母と、今の時期は手に入らないらしいから妥協してくれと懇願する私。
いや、私だって食べたいんだけど仕方ないじゃないか。
「喜八洲のみたらし団子は?」
ふと思いついて呟いた所、「それも悪くないな」祖母が折れた。
よし、それなら少々寄り道すれば手に入る。
要望はおまけ、見せたかった現状は別のところにあった。
久しぶりについたお墓。
ちょっと不便な場所にあり、親戚たちも高齢になったり、若い者たちは遠く県外へ出てしまったのもあり、そうして阪神大震災もあったのもあり、少々申し訳ない気持ちになるぐらいの傾き加減になっていた。
なるほどな、これを見せたかったのね。
私は「お墓」というものにあまり拘りがないが、なぜ祖母は拘りがあるのだろうか。
と考えたが、どうやら「息子が建ててくれたものだから大事なんだ。修復して欲しい」という事らしい。なるほど。
「今はみんな経済的にも距離的にも、そして年齢的にも難しいから、私がなんとかするからそれまで待ってくれると有難いんだけれども」
「ていうかおばあちゃんが着ている着物欲しいんだけど、誰か形見分けで持ってないの?」
「いや、阪神大震災も原因だけど、誰よここに榊植えたの。その根も原因だよ、これ!」
と、みたらし団子を供えながらブツブツと話し込んだ。
ギリギリの時間に着いたのもあり、少しして「霊園の閉園時間です」と守衛さんが巡回してきたので、そういう訳だからとりあえずよろしくね!と、みたらし団子を下げてその場を後にした。
トンボ帰りの道中で、お下がりのみたらし団子を口にした。
しっかりとみたらしの甘味が抜けていた。
(ああ、なんだかんだ喜んで食べてくれたのね)
今一つ味のしないみたらし団子を頬張りながら、「あーあ、せっかくだから抹茶とセットが良かったな」と思ったが勿論そんなものは売っていないので諦めた。
私のお菓子の好みは完全に祖母譲りだな、と改めて思った。いとこに「お前、年寄りみたいな菓子好きだよな」と真顔で言われたのをふと思い出した。
来訪者はいつも突然だ。
その時の私は、誰も居ないのを良い事に、作業デスクの上に足を投げ出して紫煙をくゆらせて居た。
いや、大体がそういう人様に見られたくない状態の時にやってくる。
彼らは私の恰好は目に入らないのか、違う所を見ているのか、その状態でもお構いなしなようで、そこについて突っ込まれた事はない。
私にとって日常の一つである三河屋業務。
家に人を上げる事が大嫌いな私だが、これについてはどうやら別の話のようだ。