【霊視鑑定ご相談事例】土地の神様が入るための「入れ物」を探した話。その後、その店はずっと繁盛しているよ。
目次
知人の霊能者からの依頼
今回は鑑定ではない依頼の話だ。
ある空き地に、綺麗な女神が居た。
きっとそこの土地神だろう。
少々気が強そうで、美しい黒髪に美しい着物。
いつも凛とした雰囲気で、見えている人が居れば必ず目を奪われるだろうという美しさだった。
私はその近辺の知人の家に行くときによく通っていたので、ちょくちょく見かけては、まだいるんだな、とずっと思っていた。
そんなある日、知人の霊能者から「依頼があったから手伝って欲しい」と連絡があった。
どうやら、神様に入ってもらうための「入れ物」探しらしい。
早速その知人宅へ向かう。どうやら新しい土地でお店を始めるにあたり、その土地を見てくれという依頼が来たので現地に行ってみたところ、そこには土地神がいたようだ。
それなら筋を通さねばとその土地神と話をしたところ、「ここの持ち主になるなら、私の祠を建てて祀るように伝えろ」という回答があったらしい。
話を聞いてみると、あの綺麗な女神の土地だった。
「あー、あそこ綺麗な女神がいるよね」「なんだ知ってたんだ」
つまり、その知人は”入れ物探し”は専門外のジャンルなもので、今のところ何のヒントも拾えないのであの綺麗な女神が気に入る入れ物を探すのを手伝ってくれ、という事だった。
”入れ物”探し
「翡翠の入れ物なら入るよ」そう私が言うと、その知人は「翡翠?それってめちゃくちゃお金かかるやつじゃん」と言う。
もちろん依頼主へ請求はするが、今からお店を始める人だし、祠も建てないといけないし、あまりにも高額なのはちょっと申し訳ないなあ・・・と悩んでいる様子だった。
とりあえず、この辺りには骨董品を取り扱う店が並ぶ小さな通りがある。
回ってみてまず「入れ物」に相応しいものがあるかどうかと、相場を見てみよう、という事になった。
何軒か見て、見当たらないので一応石材屋さんにも寄ってみた。
石材屋さんによれば、翡翠ではなく普通の石像としての受注だと15万程度、という事だった。高い。
もう一度骨董品屋さんの通りに戻ってみよう、という事で再度一からお店を見て回る事にした。
これで、最後の一軒として今日は諦めるか、という所で、木箱に入った黒い天女の姿の女神像が目に留まった。
出会った翡翠の女神像
「ねえ、これ入るよ」「え、黒じゃん」「でも、これなら入るからその女神に確認してみて」「分かった」
知人が確認したところ、OKという回答が出た。
「翡翠じゃなかったね」と言いながら店長さんを呼んだ。
「これ、幾らでしょうか」「2000円です」安い。
これを購入しよう、という事で店員さんにガラスケースから出して頂くようお願いする。
店長さんはその女神像を取り出し、一瞬驚いた表情をした。
「お客様、お目が高い。これ、黒翡翠ですよ!」
店長さんと同じぐらい目を丸くする知人と、「当ててやったぜ」とドヤ顔の私。
こういう瞬間の表情には人の本質が現れる。
私はこんな時でも勝ちたいのだ。「まあ、良かったです」と謙虚ににっこりするなんて無理だ。
骨董品屋さんというのは数が多すぎて在庫の把握をあまりしていないのだな、と会話をしながらその黒い天女の姿をした女神像を買って、帰路についた。
土地の神と私の口論
と、その道中だ。
「ねえ」
運転する知人に私は不機嫌に声を掛けた。
「ずっとあの美人の女神が”私はその像みたいに不細工ではない”って怒ってるんだけど」
「ああ、まああれだけの美人だからね。そりゃあこの像とは似てないわな」
少々うりざね顔で、体形もずんぐりしたその黒い天女の姿をした女神像。
美人の女神はたいそうご不満な様子だった。
「私はそんな顔をしていない」「私はそんな体形ではない」ずっとその像をけなし続ける。
正直うるさい。黙って聞いていたが、堪忍袋の緒が切れた。
「あのね、一度はこれで良いとOKしたんだよね?私と知人は、あなたの事が見えているからあなたがどれだけ美しいかは嫌という程分かっている。だからもうブツブツ言わないで諦めて入れよ!!!!!!!」
でも顔が、でも体形が、と引き下がらないその女神と私は、「うるさい」「妥協しろ」「諦めろ」と知人宅まで言い合いを続けた。
言い合いで疲れ果てた私は、「もうお役目終了したし、なんだかすんごい疲れたからもう帰るわ・・・」と告げ、とっとと帰る事にした。
土地の神の意地
すると翌朝、その知人から「女神像がお姿を変えられた」と連絡が入った。
その知人が、「入れ物」を入手しましたので、と依頼主に連絡をし、持って行こうと木箱を開けたところ、うりざね顔が少々シュッとしていて、ずんぐりしていたウエストはS字のしなりが出来てセクシーな体形になっていたらしい。
「余程気に入らなかったから、自分で女神像の姿を変えたんだろうよ」
私は先日のバトルを思い出してウンザリした表情で答えた。
「それだけのお力がある女神だ。土地神としても相当力があるだろうよ」
後日、祠もお店も完成し、その女神にも「入れ物」に入って頂く段取りも完了し、無事お店がオープンしたと聞いた。
それから10年は経っているが、そのお店はオープン時から変わらずずっと繁盛店で、お店のオーナーだけではなくバイトの子達もみんな、変わらずその女神のいる祠をとても大切に扱っていた。
それどころか、地元の人たちに「商売繁盛の神」として話が広がったようで、買い物の際に手を合わせて帰る人が見受けられるような場所となっていた。
先日、久々にその場所を通ったのでそこへ寄ってみた。
「どうだ、なんやかんや言いながらこの”入れ物”も悪くなかっただろう」
「そうだね、誰も見向きもしなかったのに比べたら、悪くはないね」
「ただ、やっぱり私はもっと美しいわよ」
相変わらず気が強い土地の女神。
「まあ、確かにそうだな。ああそうだ、また会うまで変わらず、そのままの勝気な性格でいてくれ。また寄るからさ」
私は手を合わせながらニヤリとその女神に向けて笑いかけてから、本来の目的地へ向かうべく車を出した。