巫-kannagi- 琉球シャーマン(ユタ)系霊能者/かんなぎのよろず相談処

独口。

Pocket

全国各地をふらふらり。

陰陽においての陰の側を歩く者。

このお話をフィクションと思うかノンフィクションと思うかは貴方の自由でございます。

いや、私もね、このお話がフィクションかノンフィクションか、実のところ良く分かっておりませぬ故────

 

そうですね、わたくしは「捨てられる」事には大分慣れておりました。

 

なんせ、産みの親にも捨てられた身の上。

あの時も、この時も、この界隈で、あの界隈で、突然に捨てられる、という事に慣れていたのでございます。

 

故に、わたくしは他者への信じる気持ち、というモノを捨て────

否、捨てたいと願いながら、未熟故に手放せずに居る、のでございます。

 

わたくしがこの場に最初に言葉を残し始めたのも、信じたい、という気持ちとの葛藤からだった様に思っております。

 

どの記事か?いえ、その頃の記事は全部消しました。それは、誰もわたくしを知らない間に全て消しておりまして、残念ながら今はわたくししか見る事ができないのでございます。

 

 

さて、その方は突然にわたくしの目の前に現れ言いました。

 

「貴方と私は同じ魔界の能力者。どうぞ今後ともよしなに」

 

二度目に現れその方は言いました。

 

「私は私の真の理解者を今世で探しておりました。それは貴方に他ならない。私は孤独でした。しかしながら貴方をようやく見つけました。私は貴方が居てくださるのであれば、どんな孤独も耐え抜く事ができるでしょう」

 

三度目に現れその方は言いました。

 

「一蓮托生という言葉を、生涯貴方にしか使いません。一蓮托生とはそれ程に重い言葉なのでございます。どうぞ、あの場所で共に誓約をしてはくれませんか」

 

きっとわたくしは舞い上がっていたのでしょう。やっと、わたくしを「捨てない」者が現れた。そう思い、わたくしは喜んで誓約をいたしました。

 

毎日のように能力者として、人として、沢山の会話をいたしました。

時に助け、時に助けられ、ああ、喧嘩も沢山ございました。

しかしながら、お互いの成長においてなくてはならない人物だと、そう思える日々が、そうですね、今世ではずっと続くと思っていたのでございます。

 

 

その方は、この能力者界隈ではそれなりに名の知れた方でございました。

わたくしはその方のその肩書きはどうでも良い、と思っていたので、実際の所、どういう事をしていらしたのかは良く分かりませぬが、その方の周りには常に誰かが居て、誰かが頼っている、その様な方でございました。

 

 

「しかしながら、この様に沢山の人に囲まれている私でございますが、私の事を人として見てくださる方は一人もおりません。故に貴方にしか本音を見せる事が出来ないのです。この気持ち、お分かりいただけますでしょうか」

 

「わたくしは、貴方がどの様な方であれ、どの様な姿を見せたとて、裏切る事はございません。どうぞこのわたくしを信じていただけると嬉しく思います」

 

「そう言っていただけると。また、私は、人を信頼するとその方に依存いたします。故に貴方に依存させていただき、これから先みっともない姿を晒す事もあるかと思いますが、どうぞ変わらずお付き合いを」

 

わたくしは、その「依存」という言葉に嬉しさのあまり鳥肌が立ったのでございます。

このわたくしに依存すると仰って下さる方が居る、その事実が誠に心地良く、また、この方を護りたい、という気持ちが強く湧きあがったのでございます。

そうですね、例えるならば、親のような気持ち、でしょうか。

 

わたくしが悪者になっても良い。

その方を護らなければならない、と。

 

そうですね、とんだ思い上がりだったのかもしれません。

 

 

その方には、常に相談の依頼が絶えませんでした。

その方の全てを受け入れてくださりそうなおおらかな見た目、言葉、その一つ一つが、誰かの救いになっている。

その事実がわたくしにはとても嬉しい事でございました。

 

ある時、その方が言いました。

 

「貴方の力は、私には無いものでございます。どうぞお力を貸していただけませんでしょうか」

 

わたくしは喜んで力を貸す事を受け入れました。

その方の依頼者である人の霊視、依頼者への能力的な対処、わたくしの力がお役に立つのであれば、と、惜しみなくわたくしの力をその方へ差し出しました。

 

「貴方のお陰で無事、依頼者様の問題が解決いたしました」

 

その言葉を聞くだけでわたくしは”お役に立てたのだ”と嬉しく思っておりました。

また、わたくしが取る情報に間違いはなかったのだ、という自信にも繋がりました。

そうして、わたくしのようなこの界隈で捨てられ続けてきた陰のモノでも、ずっと願っていた”誰かを助ける事”が出来るのだ、という思いも持つようになりました。

 

 

ある日、わたくしはその方へ切り出しました。

 

「わたくしは、人助けをしたいのでございます。この力が誰かの助けになるのであれば、わたくしも、貴方のようにもっと多くの方の助けとなりたいのです」

 

「そうですね、私と一緒に、より多くの人を助けましょう。私たちは一蓮托生。二人で一人、なのですから」

 

一緒にそのためのプロジェクトを作りましょう、とその方は言いました。

 

 

「貴方が前に出て、私が後ろに立ちましょう。貴方は表に出るべき方。そうして、そうする事で私はもっと自由に動けるようになります。つまるところ、形はどうあれ、貴方が”教祖のような立ち位置”となっていただく事が、二人にとって最善の選択となります」

 

さすがにわたくしも、教祖、という言葉には抵抗がございました。

「新興宗教を作るという事なのでしょうか?」

 

わたくしはその方に問いました。

 

「いえいえ、あくまでも例え話でございます。誰が前に出るか、表に出るか、というお話でございますのでご安心を」

 

正直なところ、わたくしは、それがどんな形になろうと良かったのでございます。

ただただ、その方が私の思いに共感して下さった。

そうして、一緒にやりましょうと言って下さった。わたくしの夢、目標とする所へ一歩近づいた。

それだけでも充分に嬉しく、また、わたくしの生きる目的とする道が開かれたと思ったのでございます。

 

 

────hand in hand project

 

ありきたりな名前かもしれませんが、このプロジェクトに名前を付けました。

 

一人一人の力は小さくても、多くの人の手が集まり、重ね合う事によって、その力はとても大きくなる。

お金だけではなく、自分が得意であること、自分が出来る事で、誰かを助ける事が出来る。そんな仲間を集めたい。集まって欲しい。

 

そんな思いを込めた、名前でございました。

 

「この思いを込めた、様々な言葉を綴りたいのですが、なにぶん、私は文章を書くのが苦手でございます。貴方にお願いしてもよろしいでしょうか」

 

わたくしは、喜んで、その方からいただいた一文を元に、たくさんの言葉を綴りました。

思いは同じなのだから、伝えたい言葉にずれがあるはずが無い。そう思い、言葉を綴り、その方へ送りました。

 

「流石でございます。私の伝えたい事と一寸のずれもございません」

 

その言葉をいただける度に、”私たちは一蓮托生。二人で一人”という言葉が心によみがえり、わたくしはとてもあたたかい気持ちになれたのでございます。

 

 

 

そうですね、今思えば、わたくしは、単に舞い上がっていたのでしょう。

相も変わらず、わたくしはその方のお役に立てれば、と、その方の元へ来る依頼者様のために、と、惜しみなくわたくしの力をその方へ差し出し続けておりました。

 

 

「貴方のお陰で無事、依頼者様の問題が解決いたしました」

 

 

 

────しかし、少しずつではございますが、わたくしはその方の言葉の変化を感じ始めておりました。

 

 

 

「貴方のお陰で無事、依頼者様の問題が解決いたしました」

 

わたくしは、完全にその方の陰の存在である、否、この世に存在しない事とされている能力者となっておりました。

それでも、お役に立てるのであれば、今の状況がこの先の未来へ繋がるのであれば、という気持ちに変わりはございませんでした。

 

 

「貴方は、表に出るべき方ではありません。故に、私が表に立ちましょう」

 

 

その方の名前は更に更に拡がりました。

 

 

「貴方の綴った言葉で、依頼者様が感涙致しました。しかしながら、それは私がその言葉を発したからに過ぎません」

 

 

そうしてその方は「先生」と呼ばれ、色々な方から崇められるようになっておりました。

 

 

「何故なら、貴方の言葉は刃であるからでございます。それを私が柔らかく、優しくお伝えする事で、依頼者様に響いたのでございますから」

 

 

わたくしの言葉が人を傷つけてしまうのであれば、わたくしは言葉を発するべきではないのかもしれません。

 

 

「貴方は表に出てはいけません。貴方は呪詛使い。無意識に人を潰します故。そうです、会うだけで潰してしまう、そういう存在なのでございます」

 

 

わたくしが存在するだけで人を潰してしまうのであれば、わたくしはやはり、息を殺して生きている事が相応しいのでしょう。

 

 

 

────やはりわたくしは、”捨てられても仕方のない”存在だった、ということなのでしょう。

 

 

「大丈夫でございます、私”だけ”は、貴方の事を理解しております故。しかしながら他者には理解できない事でしょう。だから、貴方の代わりに私が表に立ちましょう。ご理解いただけますよね?」

 

 

そうして、ある日を境にその方はわたくしに対しての言葉を変えました。

 

 

「依頼者様の問題は解決いたしました。ええ、これは私の本来の力でございます。」

 

「先生に使っていただきたいという事で、車をいただきました。困り果てましたが、それもその方からの信頼、という証でございますので有難く」

 

「依頼者様から先生に使っていただきたいという事で、百万円の健康器具を送ってこられました。困り果てましたが、それもその方からの信頼、という証でございますので有難く」

 

そうですね、手柄というものは、時に自慢をしたくなる事もございます。それは、誰しもが持つ感情でございます。

 

 

しかしながら、わたくしも同じ”人”でございます。

 

 

「────その一部は、わたくしの力、なのではございませんか?」

 

絞りだすようにわたくしは言いました。

 

 

「わたくしは、貴方を信頼しておりました。故に力を差し出しました。表に立つのはどちらでも良かったのでございます。ただ、わたくしの夢、目標とする所と、貴方の夢、目標とする所が同じであると信じておりました。それは、嘘、だったのでしょうか?」

 

 

あの時のあの方は、心底、わたくしを見下した目をしておりました。

 

「私は、〇〇の大阿闍梨から、阿闍梨の称号をいただいている存在でございます。また、○○様の愛弟子としても認められている存在でございます」

 

「貴方には何か一つでも後ろ盾はございますか?一つでもあるのであれば、私に言ってごらんなさい。否、聞くまでもなく、無い、ですよね?」

 

つまり、わたくしは能力者や宗教の世界では無名である、という事でございます。そうですね、わたくしはどこそこで修行をした、どこそこで称号をいただいた、そんな事は一度もございません。

 

「そんな貴方が、そのような夢、目標を持っていたとして、人を動かせるとでもお思いでしょうか」

 

そうですね、わたくしは無力であるが故に、そのような事は叶わないかもしれません。

 

どれだけわたくしが叫んだところで、わたくしには後ろ盾なんてないのですから。

 

 

 

「大丈夫でございます、私”だけ”は、そんな無力な貴方の事を理解しております故。しかしながら他者には理解できない事でしょう。だから、これからも貴方の代わりに私が表に立ちましょう。ご理解いただけますよね?」

 

 

 

────そうですね、わたくしは「捨てられる」事には大分慣れております故、大丈夫、でございます。

 

 

 

しばしの間、わたくしは、わたくしが涙を流す理由すら分からずにおりました。

 

これが悲しみであるのか、痛みであるのか、そもそも、何故涙を流すのでしょう。わたくしには何も無い、のに何故わたくしは涙を流すのでしょう。

 

 

────ああ、そうですね、わたくしは、言葉、を返して欲しいのかもしれません。

 

 

そうしてわたくしはこの場へ、その方へ送った言葉を綴り続ける事にいたしました。

わたくしの存在というものは、これらの言葉の中に在った。故に、返して欲しいと思ったのでしょう。

 

 

それと、まだ残る、信じたい、という気持ちとの葛藤を、この場においていつか折り合いを付けたいと────

否、そう願いながらもまだ、待ち続けているのかもしれません。

 

 

 

そうですね、わたくしは「捨てられる」事には大分慣れておりました。

 

なんせ、産みの親にも捨てられた身の上。

 

あの時も、この時も、この界隈で、あの界隈で、突然に捨てられる、という事に慣れていたのでございます。

 

 

故に、わたくしは他者への信じる気持ち、というモノを捨て────

 

 

否、捨てたいと願いながら、未熟故に手放せずに居る、のでございます。

 

 

 

全国各地をふらふらり。

陰陽においての陰の側を歩く者。

このお話をフィクションと思うかノンフィクションと思うかは貴方の自由でございます。

いや、私もね、このお話がフィクションかノンフィクションか、実のところ良く分かっておりませぬ故────

 

しかしながら、今のわたくしに出来る事は、少しづつでも、一人でも、前へ進む事、それだけなのでしょう。

わたくしの生きる目的とする道は、わたくし自身が開けば良い事でございます。

 

 

 

────巫

コメントは受け付けていません。

Pocket

あなたのお悩みをお聞かせください

ご予約はこちら ご予約はこちら arrow_right
PAGE TOP