連載「霊能者かんなぎの人生」vol.1 霊能家系に生まれても、異端である
連載「霊能者かんなぎの人生」vol.1 霊能家系に生まれても、異端である
なんとなく、人生を書き綴ろうと思った事に対した理由はない。
ただ、同じような思いをしている人がいるならば、そういう人に届けば良い、そう思った。
私は確かに霊能家系の生まれであるが、それでも、その中では異端であったため、
その力を重宝される事はなく、重宝されたのは同じような力を持った別の子らであった。
「わかりやすい霊能者」
そういう言葉で表現するしかないのだが、別の子らはそういった霊能者だった。
わかりやすく霊が見え、
わかりやすく「あなたの知らない世界」のようなオカルト番組に出てくる体験をしていて、
また、見えている世界も、口にする事もそのような番組そのもので、
「人が求めるのはそういう霊能者なのだろうな」と思うようなものだった。
霊能家系なら生きやすかったでしょう、周りの理解もあったでしょう、と言われるがそんなことはない。
そんな家系に生まれても、その家が「わかりやすい霊能者」を求める家系であったから、
私は異端として扱われ、理解者はタイラーと、あとは父ぐらいのものだろう。
他の、直系であるはずの母方の親族たちの大半は、私を理解はしなかった。
「空想好き」そう言われて無かった事にされ、
私が発した言葉は別の子が言った事になり、別の子がもてはやされる。
だったら、もう言葉なんて発せず勝手にやったら良いんではないか、
そんな事を割と小さいうちに思うようになったので、
親戚の間では「おとなしい子」「ずっと漫画を読んでいる子」と思われていたようだ。
だって、喋ったって無駄じゃん。
皆が求めている世界観は、私の中にはないのだから。
子供の頃、居間に正座をして鬼と喋っていた事も、
怖い思い出ではなく楽しい思い出だった。
そんな事を口にしたところで、「また始まった」という顔をされて無かった事にされる。
その眼の前では別の子が、「おじいちゃんが仏壇の扉を開けろって言ってる」と騒いでいる。
「そうなのね」皆が従う。
「仏壇に住んでいるわけじゃあるまいし、何言ってんだ」と思っても、それを口にすればきっと叩かれる。
だったらそれを見なかった事にして漫画に没頭するしかなかった。
子供なんて本来は承認欲求のカタマリで、
もっと褒めて貰いたかったり、もっと理解して貰いたかったりするものだろう。
そんなもの、早々に打ち砕かれて、早々に諦めた。
見えている世界は独り占めする事にしたので、
「空想好き」のキャラクターは加速するばかりだったし、
それを誰かに話すこともしてこなかった。
それに、
母親の要求どおりに動けなければどうせ叩かれるし、
母親の世間体を壊せば叩かれる。
母親の望むようなお利口さんでいなければ叩かれるし、
母親の望むように優秀な子でいなければ叩かれる。
人間として生きる方向でも、早々に色々を諦めた。
人の顔色を見て、人の人生を歩む、それが幼少期の私だった。
そんな私の人生を語る事に意味があるのかはわからない。
ただ、自分がもし、異端だと思っている人がいれば、
また、これから先の話を通して、苦しい人生を歩んでいる人に「ひとりじゃない」と思って貰えれば、と思い、
不定期ながら人生を語らせていただこうと思う。