【岡山県加賀郡】加茂の提婆は人をとる。呪詛の社、円城寺提婆宮【神社仏閣探訪】
【岡山県加賀郡】加茂の提婆は人をとる。呪詛の社、円城寺提婆宮【神社仏閣探訪】
その日、この場所はただの通過点の予定だった。
別の神社を目的とし、下道をのんびり走っていたら、突然目に止まった看板。
「加茂提婆宮でゆっくりしていきませんか?」
たしかそんな内容の看板だったと思う。
ゆっくりだったかのんびりだったか、ゆったりだったか、
運転中だったので写真を撮れず今になって後悔している。
この時の行程で、ちょっと「加茂」というワードに敏感になっていたのもあるが、
なぜあの看板を見て折り返したのかはいまだに分からない。
神社仏閣の看板はあちこちに溢れていて、用がなければ目に止まっても「また今度」と素通りすることが多い。
しかし、なぜか今回は、あのようなのんびりした雰囲気の看板を見て、少し考えながら走って、結局、路肩に車を停めて場所を調べ、折り返した。
駐車場は、公民館なのかな、案内板がある円城小学校の横の敷地に、ゆったりめに用意されていた。
そこから歩いて円城寺へ向かう。提婆宮は、円城寺の中にある。
看板の奥に見えているのが、円城寺の石造宝篋印塔。結構大きい。
南北朝時代に建てられたものらしい。年代が刻まれている石塔は珍しいらしく、
また、塔を解体した際に、地下石室より千体仏像が出たことでも有名、との記載があり、
なんだか色々ととにかくすごい。
そうして進むと次は円城寺の説明板がある。
初め本宮山正法寺と称して、行基の開山と伝えられ、鎌倉中期、現在の地へ移されて円城寺と改めました。今は地蔵院、医王院を残すだけですが、昔は十宗の僧坊が立ち並び門前町として非常に栄えました。今も小規模ながら門前町のおもかげを、そこかしこて見受けることができます。千手観音を安置する本堂は、弘化3年の再建。その他寺域に阿弥陀堂、提婆天の社があります。古から「加茂の提婆は人をとる」といわれていますが、これは深夜寺域の古木に呪釘を打つと、提婆のつかわしめ(キツネ)が相手にとりついて殺してしまうという云い伝えからきたものでしょう。
ああ、千手観音かあ、なるほどなるほど、と読み進めているとなんだか最後にすごい事が書いてあるのだが。
そうか、この提婆天に呼ばれて来たわけだな、と一人でニヤニヤしてしまった。
まずは円城寺の本堂から。
千手観音も好きなんだ。
如何せん、色々と歴史があって、なんだかとても穴場を見つけたような気持ちで、ずっとテンションは高い。
そうして、お楽しみの提婆宮へ。本堂のすぐ横の道を行けば良いので迷うことはない。
呪詛の社とは思えない明るい雰囲気。
提婆天、どちらかというと優しい雰囲気だけどな。
やはり明るい。
むしろほのぼのとした空気。
ここなら何時間でもゆっくりしていたい。
おばあちゃんちの縁側に座って、ゆっくりしていけ、と言われているような、そんな空気。
しかし、この提婆宮のご利益の看板だ。
「提婆天 芸能の神」
「音楽・弁才・得勝・福智・延寿・除災」
あれ、普通に良い感じ・・・?と思いながら読み進めて行くと、最後。
「調伏:使わしめの白狐を派遣して非道な者を懲らしめて下さいます」
・・・先程の案内板に書かれていた言葉が再度浮かぶ。
古から「加茂の提婆は人をとる」といわれていますが、これは深夜寺域の古木に呪釘を打つと、提婆のつかわしめ(キツネ)が相手にとりついて殺してしまうという云い伝えからきたものでしょう。
テンションは爆上がり。
神様、ここに導いてくれて本当にありがとう。
こんな場所にこんな神がいるなんて、本当に知らなかった。
そうして、こんなに思い切り調伏がご利益として書かれている場所なんて初めて見た。
もう、ずっと感謝の気持ちでいっぱいだった。
感謝以外にどう表現したら良いのだろうか。
いやあ、懲らしめて欲しい人、いない事もないんだが、とニヤニヤしていたが、
いや、逆に自分が今夜にも白狐に懲らしめられるかもしれないな、と思い、改めて深々と頭を下げて、その場を後にした。
もちろん、これからも呪釘を打ちに行くつもりはない。
ここはとても気に入ったので、また来たい。
また会おうね、提婆天。