台風直撃の日の「アメノミナカヌシの試練」【霊能者が見るセカイ】
目次
台風直撃と知りながら向かった幣立神宮
幣立神宮(幣立神社)へ行った。真夜中に。しかも台風が直撃するという日に。
真っ暗なだけではなく、風は強いし雨もいつ大降りになるか分からない状況で。
正直早く帰りたかった。用件を聞いて、さっさと引き上げたかった。
「めんどくさい・・・」
道中出てくる言葉はそればかりだった。
アメノミナカヌシ、何でまたこのタイミングで呼び出すの?余程の用事なの?ああ、めんどくさい・・・。
幣立神宮の駐車場から鳥居まで歩く途中、何台かトラックが通りがかった。
いかんせんこんなタイミングだ。トラックの運転手さんはさぞかしビックリした事だろう。
鳥居をくぐっても本殿までの階段も真っ暗だ。携帯のライトだけで階段を上る。
良い感じに強めの風が吹いている。
傍から見れば呪いをかけに来た人でしかない。
そうして本殿に着いて、「アメノミナカヌシ・・・とりあえず来たからさ・・・用件は帰り道にでもゆっくり聞かせてくれたらと思うんだ。なんせ台風が来ているんだ」と一人呟いた。
「八大龍王水神へ寄って行け」
「はああああ?」
八大龍王水神のところへいくには山道を下らなければならない。
昼間でもまあまあ普通に山道を下るので、キツイと思う人もいるかと思う。
何度も言うが、この日は台風が直撃と言われていた日だ。
しかも夜中。
すでに長い時間雨が降っていて、足元はぬかるんでいる。
もちろん明かりなんて一つもない。
「ここで殺されたとしても誰にも見つからないだろうなあ」
心からの呟きを、アメノミナカヌシはスルーした。
分かったよ行けばいいんだろう。
山道を下る。もちろん真っ暗闇だ。しかも雨。
携帯のライトを再度点けて、山道を下る。
善意で設置された足場になるブロックも、所々ぬかるみで滑り、かえって危険な状態だ。
ちなみに履いているのはクロックスだ。
神社へ行くときはだいたいどうなってもいいようにクロックスである。
「なんかこういうゲームがあったような気がするなあ」
独り言を言わないとやっていられない状態だったので、思いつくままにボソボソと口にしながら、ずっと足元だけを見て下りて行った。
「この道の往復の間、一度も転ぶな手をつくな」
アメノミナカヌシの声がした。
「・・・ちっ、分かったよやってやるよ」
足元を取られそうになっても、私は一度も転ばなかった。
滑って危うく目の前の木に手をつこうとしたが、ギリギリ思い出して手を引っ込めて踏ん張った。
「一度も転ぶな手をつくな・・・一度も転ぶな手をつくな・・・」
呪文のように唱えながら鬼の形相で真っ暗な山道を往復する私は、きっと通り魔だって逃げ出すレベルだっただろう。
八大龍王水神の社についても相変わらず真っ暗だ。
パワースポットと呼ばれる八大龍王水神。
闇の中にある此処へ、こんな深夜に誰が来ようと思うか。
いっそ写真でも撮って誰かに送ってみるか、と撮影するが、もちろんただのオカルトスポット状態の写真が撮れただけであった。
面白いのでこの写真は私の弟子へ送っておいた。
「まあ、ちょっとした試練だ。帰りも忘れるなよ。転ぶな手をつくな、だ。」
ああ、そうですか。それなら負けません。勝って帰りますとも。
帰りは「マジ暗闇ー!ガチ暗闇ー!」だの
「えぐいなーホント!」だの
「でも負けねえからなあああ!」だの
散々デカい声で独り言を言いながら戻った。
しかもヤケクソだったのか半分気が触れていたのか、一人ニヤニヤしながら。
誰かもし人がいたならきっと怖かったと思う。
「本当にやるとはな。気を付けて帰れ」
「覚えとけよアメノミナカヌシいいい!!!」
泥だらけの足元。車に乗るのは憚られたが、仕方ない。
幸い大降りにはならなかったが、それでも雨に濡れたので、完全に怪しい人か幽霊のようだ。
「何あの人怖い」というあからさまな視線を食らう
数キロ先に道の駅があるので、そこまで戻り、そこにあるトイレで足を洗う事にした。
トイレへ向かっていたら、こんな台風が来るという時なのに、カップルがいた。
彼女の方がトイレから丁度出てきた。
遠慮するでもなく「この人怪しい」という目でこちらを見ていた。
良いんだ、慣れている・・・。
足を洗いながらY氏へ電話をした。
かれこれこういう訳で台風が来ている中幣立神宮へ行ったんだが。と。
「そうですかあ、台風が来ている中お疲れ様でした。気を付けて帰って下さいねえ」
他人事なのでどうでも良い、というあからさまな態度で対応されて電話をとっとと切られた。なんて奴だ。
数年経った今、それは叶えられたという事は理解した
この時私は、「一度も転ぶな手をつくな」と言われた事は言わなかったのだが、数日後にこのY氏が別の神社へ行った際に、全く同じ言葉を言われたと報告してきた。
二人揃ってこの言葉を言われるとは、これは「(地面に)お手付きをしたらそれは諦めの心。お前の心願成就は叶わない。お前の意思が本物かどうか試させて頂く」というガチ試練だったんだろな、という結論になった。
その時は、今回のアメノミナカヌシはちょっとやりすぎではないかと思う。後日苦情を言いに行かねば、と固く決意をして帰路へついた。
果たしてあれから数年が経過しているが、その試練の対象になった心願成就については概ね叶えていただいたようである。
それに、今となってみれば、あの程度の試練なんてまだまだ生易しいものだったんだ。
厳しくも優しいアメノミナカヌシ。
あれはかなりの手加減が入っていたのだと、今ならわかる。