【霊視鑑定ご相談事例】霊界三河屋業務。あの世からのご要望を承っております。「お通夜の席でのお父様」
霊界三河屋業務
うちにはよく亡くなられた方が来る。
何かしらの要望があって来るので、この事を私は「霊界三河屋業務」と呼んでいる。
ちなみにこの三河屋に来る皆様は玄関からは来ない。何故かベランダからやってくる。
うちのベランダは、霊界においての勝手口なのか。
「すみませんが」
今日も勝手口から来客だ。
本日は、お通夜の席での出来事
本日は、お通夜の席での出来事だ。
あらかじめ、喪主にあたる方から、「ここで父が何をして、何を言っているのか逐一報告して欲しい」と言われていたので、遠慮なくそうさせていただくつもりで私はその場に居た。
まず、皆様が涙しながら「お疲れ様だったね」等と話しかけている間、その本人はずっとその場におらず、斎場内をウロウロとしていた。
喪主が選んだ自分の写真がとてもお気に入りだったようで、「これ、辛気臭くなくて良いと思うんだよな」と話しかけてきた。
「確かに、とても楽しそうな表情で良いと思うよ」
「あと花。俺が菊の花が嫌いだって言ってたから菊の花じゃないのを選んでくれたんだな。これも良いな」
「親戚中の大反対を押し切ったらしいよ」
実際、今回の通夜については、かなり明るい花々で装飾されており、また、思い出ボードが作成され、本人の趣味の物などが多数展示されており、古い人間なら不謹慎だと怒るであろう明るさであった。
なので、見えられた方々は、最初は涙しているが、最後は色々な思い出話を笑顔で語り、笑顔で帰って行かれるという、私的にはとても良いものであった。
要望は「マップル」
「マップル」
唐突にお父様が言った。
「毎日眺めていたマップル(地図帳)がない」
その旨喪主に伝えると、喪主が家族に聞き取りをしていた。
結果、どうやら喪主の母にあたる妻が病院で片付けをした際に捨てたらしい。
夫婦仲があまり宜しくなかったのもあり、夫の所持品に興味が無かったようだ。
「買ってこようか」そう申し出てコンビニへ走った。
お父様は笑顔で、「この表紙のマップルだからね」とマップルを手に持って私に見せてきた。
「ああ、了解」表紙を見せて貰えたのですぐに目的の物を購入する事ができたので、私はまた戻り、思い出の品コーナーにそっとマップルを置いた。
落ち着いたのでまた斎場に目を向けると、今度はお父様はお供え物の鶏卵饅頭の前に居た。
お父様の大好物だった鶏卵饅頭を、喪主は山のように積み上げて置いていた。
その前には椅子があり、お父様はその椅子に座り、鶏卵饅頭を眺めていた。
余程大好物だったのだろう。
「お茶」
お父様がそう言うので、私は斎場に備え付けてある「ご自由にお飲みください」と書いてあるお茶とお湯が出る機械でお茶を淹れて来て、鶏卵饅頭の横に置いた。
それからもしばらくお父様は椅子に座り鶏卵饅頭の所に居た。
喪主に「今どこにいる?」と聞かれたので「鶏卵饅頭の所」と言うと「好きだねえ」と爆笑していた。
すると、斎場の係の方が、何故かお父様が座っている椅子を、鶏卵饅頭と反対の向きに変えて何処かへ行ってしまった。
「えっ」という顔をして、椅子から立ち、少ししょんぼりとした顔で突っ立って鶏卵饅頭を眺めるお父様。
「あーもう」と言いながら椅子を元の向きに戻した時に、親戚の方に見られて少々怪訝な顔をされてしまった。
それから、少々暇になったので、お父様が撮影した写真を集めたアルバムがあったので、私はそれを眺めていた。
背後から笑顔で話しかけてくるお父様。
「この写真が一番好きだなあ」そういうので、そのページを多くの方が見てくれるように、開いて置いておくことにした。
マップルについても、「一番行って良かった場所はここ」というので、マップルも開いておくことにした。
もう痛くない、と笑顔で言うお父様
「あちこち痛かったけれども、もう痛くないんだ。アイツにもそう伝えてやってくれ、俺が話しかけても気付きゃしないんだ」
「わかったよ、ちゃんと伝えておくさ」
皆が帰った後に、喪主が来て「色々と取次をありがとう」と笑顔で言ってくれた。
「本来ならば何も分からず、悲しみに暮れるだけの時間となっていたかもしれない。
でも、行動や言動を逐一報告してくれたお陰で、自分はとても穏やかに見送る事が出来る。
こういうご縁があった事を嬉しく思うよ」そう言ってくれた。
私は、そう言って貰えた事が本当に嬉しかった。
「何かあれば、また依頼してください。私に出来る事はこれぐらいですが」
鶏卵饅頭か、食べた事がないが気になるな。
一度買いに行ってみるか。そう思いながら帰路についた。
来訪者はいつも突然だ。
その時の私は、誰も居ないのを良い事に、作業デスクの上に足を投げ出して紫煙をくゆらせて居た。
いや、大体がそういう人様に見られたくない状態の時にやってくる。
彼らは私の恰好は目に入らないのか、違う所を見ているのか、その状態でもお構いなしなようで、そこについて突っ込まれた事はない。
私にとって日常の一つである三河屋業務。
家に人を上げる事が大嫌いな私だが、これについてはどうやら別の話のようだ。